私の職業(その8)

 「みなみちゃん、こんな物、持ち歩いてるんだ。」
そう言って私の前にコンドームを差し出した。私は恥ずかしさで頭がボーッとして一瞬何を言われたのかわからなくなった。
神坂さんはさらに私に近づいて来て、私の手を取り、コンドームを私の手に握らせた。神坂さんの手は冷たく、私の体温を次第に奪って行った。
「離して。」
私の声が小さく部屋に響いた。神坂さんは私の頬に手を移し
「みなみちゃんのぽっぺは暖かいな」と言った。
「だって夏だもん。」
私は他に何も言うことが思いつかずにうつむいて答えて、頭を後ろにやった。私の頬は神坂さんの手から離れまた、発熱を始めた。

 この場を立ち去らなければならない事はわかっていた。だけどなぜか体が動かなかった。神坂さんは私の肩に両手を置き、私を引き寄せ、背中に手をまわした。私の顔が神坂さんの胸に押し付けられた。あの匂いが、いつものあの匂いが、私の肺に充満した。私は大きく息を吐き、さらに鼻から神坂さんの匂いを吸い込んだ。神坂さんは私の足と足の間に体を入れて来て、私達の体はさらに密着した。私は何度も深呼吸した。その度に理性が壊れて行くのがわかった。最後に「まさと」と意識の底で叫んだけど、何処にも届かなかった。私の手は神坂さんの背中に回っていた。神坂さんは私の顔を人差し指で上を向かせ、私の口の中にどろっとしたものを流し込んだ。私は体の力が抜け神坂さんの白衣にしがみついた。
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by haru_ki_0207 | 2004-08-11 02:30 | ショートストーリー  

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