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ユニクロ

朝、
出勤途中の電車の中で、
微妙な違和感に包まれた二人を見た。

生地がグレーの、黒いドット柄のシャツを
二人は着ていた。

うりふたつというか、全く同じ。

「いやあ、かぶっちゃいましたね」と、
声をかけてあげたかった。


一人は気がついていて、目が泳いでいた。

一人は背を向けていたから
気が付いてなかったかもしれない。

そして、僕が気づいてしまった。

きっとユニクロのシャツだと思った。




夜、
帰宅途中の電車の中。

目の前のおばあさんが
釣り棚から重い荷物を降ろそうとしていた。

僕は手を貸してあげた。
おばあさんは僕に軽く会釈をしてお礼を言った。

僕の斜め45度に座っていた女の子が
僕を見て微笑んだ。

しばらくたってその女の子を何げに見ると、
まだ微笑んでいる。

たまには良いことをするのも良いなと思った。



僕は出入り口のドアにもたれ掛かって外を見ている。
横には向こう側を向いて、おっさんが立っている。
黒いバックを肩から下げている。
どこかで見たことがあるデザイン。
どこのメーカーかも言える。
いくらかも言える。
ユニクロで2980円だ。
僕も買った。

そして今、それを手に持っている。



女の子が微笑んでいる理由がわかった。
全ての現象には理由があるんだ。

微笑んでいるんじゃ無くて、笑っていたのだ。
僕は彼女の方を振り返る勇気はなかった。

「畜生」と、思った。

金に糸目はつけない。
誰にも真似出来ないバックを買ってやろうと思った。
デザインが優れ機能的で実用的なバックを。

僕は最後まで振り返る事なく、
目撃者である女の子を気にしながら、
電車を降りた。


新しい小さな決心を抱きながら。






追伸
僕は未だに、ユニクロを越えるバックを
発見していない。
どれも、一長一短あって、
僕の要求を満足してくれない。
値段が高ければ良いというものでもないのである。

ただ、かぶるのはちょっとね。

by haru_ki_0207 | 2008-09-28 23:49 | 雑記  

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