私の職業(その6)

「みなみ」
私の名前を呼ぶ声が聞こえる。私は覚醒した意識の中、まさとくんに目をやった。まさとくんはベッドにしゃがみこみ、だらんと伸びたコンドームを持ってペニスにかぶせようとしている。さらにまさとくんの側にはクシャクシャに丸められたゴムの固まりが放置されていた。
「みなみ、ごめん。入らない」
まさとくんの情けない声が、今度ははっきりと聞こえ、私の頭の中で状況が把握されつつある。まさとくんは、あの本屋で立ち読みして、何を学んだんだろう?コンドームの装着の仕方はちゃんと箱に書かれてある。私はコンビニでこっそり買ったコンドームを財布の中に入れてあるのを思い出し、ここで出すべきかどうか迷った。コンドームをこっそり買う女を、しかもまだ処女の私をまさとくんはどう思うだろう?いつも受け身な私をまさとくんはどう、思い直すだろう?私達はお互いベッドの上で正座して、まさとくんの作業を見守りながら、別々の事を考えていた。

 結局、私達の計画は失敗に終わった。私は自分で買ったコンドームをまさとくんに差し出す勇気を最後まで持てず、まさとくんも伸びきったコンドームを手なずける事が出来きなかった。今思えば、口で出して上げることも出来たんだけど、高校生の私には考えもつかなかった。それでも初めて裸のまま抱き合えた喜びはひとしおで、ある程度の満足感を胸に抱き、まだこれからいくらでもあるであろう、次の二人だけの時間に期待しつつ、ふたりは朝まで裸のまま抱き合って眠った。その期待が泡と消える事も知らずに。
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by haru_ki_0207 | 2004-07-24 20:21 | ショートストーリー  

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