処女

昔々の事。
同僚の女の子から映画に誘われた。
彼女が僕を映画に誘うのは初めてのことだった。
周りから処女と噂されていた女性。
ただ誘った事にたいした意味はない。
単にチケットの有効期限が今日までだったのと、周りに暇なのが僕だけだったからだ。
僕は深く考えもせずに、のこのこと、ついて行った。

映画の冒頭は、激しいく濃厚なセックスのシーンだった。
僕は彼女がどんな顔をして見ているのか、
見たくてたまらなかったが、目が合うのが怖くて出来なかった。

スクリーンの中では、暗い寝室のなか、月明かりに照らされた男女の肢体がうごめいていた。
僕は彼女と来たことを後悔し始めていた。
処女と映画を見に行って濃厚なベッドシーンが始まった経験を持つ男性なら誰でもわかると思うが、
それはとっても気まずい。
僕らの関係が無関係だったから、なおさらである。

しかし、幸いな事にスクリーンは青い海を映し始めた。
真っ青な海に白い砂浜。
男はいつもぶらぶらしていて、たまに気が向いたら船の修理をするのが仕事だった。
海の近くに建てた小屋に住み、女はつい最近一緒に住み始めたばかりだった。

ある日、女は男が密かに書き溜めた小説を発見し、それを一晩かけて読み、男の才能を発見する。
女は男に小説家になる事をすすめるが、男はそんなの無理だと言って相手にしない。
しかし、女は男の才能を信じ、奔走し、やがて男の小説は世に出る事になる。

大筋はそんなところだ。
題名は忘れてしまった。と言うか最初から知らない。
最後に女は気がおかしくなって、男の手で殺されてしまう。
どうしてそうなったのか、思い出せない。
僕はもう一度、この映画を見る機会があるのだろうか?
そしてあの時の彼女は、まだ処女なのだろうか?

色んな事が僕とは無関係に進み、もはや確かめようもない。
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by haru_ki_0207 | 2004-07-21 23:53 | 雑記  

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