誘い文句

「どういうふうに誘ってたら、OKしてもらえる?」

なんて言って、若いころは女の子をよく誘い出したものだ。勿論、TPOに合わせて使い分けるんだけど。
いつだったか、同じビルに入居している女の子が可愛くて気に入ってたんだけど、偶然コンビニで一緒になって帰り道。

「お疲れさまです。」

彼女は最初ちょっとびっくりするけど、たまにすれ違い、挨拶も時々交わす同じビルの入居者だとわかると安心して挨拶を返す。そして世間話が始まる。天気の話題というのが当たり障りがない。

「今日も暑いですね。」

彼女も同意する。夏は暑いし冬は寒い。雨の日はうっとうしいし、春は爽やかなのである。

「こう暑いと昼間からビールが飲みたくなりますよね。」

彼女はくすっと笑う。別にどんな冗談だって良い。ちょっとでも、打ち解ける事が大事なんだ。

「この辺は誘惑が多くて。なかなか真っすぐ帰れませんよね?」

さりげなく、同意を求める。彼女がお酒を飲める体質なのかの確認は大事なんだ。

しばらく、この界隈の情報を交換する。あそこのお店はランチが美味いとか、夜は遅くまでやってるとか。
そして、登場する。

「そうそう、今度食事に誘いたいんだけど、何て言って誘ったら、OKしてもらえるかな?」

いつの間にか、ため口に変わっている。
彼女は、にこにこしながら考え始める。でも、頭の中が混乱している事が分かる。相手の返事を待たずに僕は話しはじめる。

「じゃあ、今週の木曜日か、金曜日はどう?」

彼女は混沌とした質問から二者択一という質問に救いを求める。
「今週、暇な日ある?」なんて聞くのは愚の骨頂である。結論の見えないイラク戦争みたいに泥沼にはまってしまう。相手の返事はシンプルにしてあげるのが、親切なんだ。

「金曜日だったら、今のところ空いてるけど」
「じゃあ、予約しとくね!世界のビールが置いてあるお店があるんだ。」

予約といのはポイントで暗黙の約束を交わしたことになる。世界のビールは、これはどうでもいい。なんだって良いんだ。僕らは世界のビールが置いてあるちょっと珍しいお店があるからわざわざ行くのであって、決して、よく知りもしない男女が二人っきりで飲みに行く事を全面に出しては行けない。何事も理由が必要なんだ。ホテルに入る時でさえ。

僕はこれでも結構ドキドキしながら、ステップを踏んでいった。もちろん、最初はつまづきながら。
決して軽やかなステップなんて踏めなかったけど、色んな方法を考えながら、なんとかデートにこぎつけた。

だけど、そこから先はノウハウもセオリーも無かった。あるのはただの現実だけだ。
僕は失い続けている。今も昔も。
そしてたぶん、これからも、ずっと。
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by haru_ki_0207 | 2004-06-30 23:24 | 雑記  

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