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ハクモクレン 再び(6/12)


砂漠のうねりは影になってグラデーションを演じていた。
幻想的な風景。
フランチェスカは僕の側に寄り添うように立った。
二人の影が砂の上に落ちた。
フランチェスカの細い体がより細く投影された。
砂の上でも僕らはぴったりと寄り添っていた。
長い手が僕の腰に巻かれ、フランチェスカは僕の脇腹に顔をうずめた。

さて、どうしたものかと思った。
いくらなんでも倍近く歳の離れた女の子を抱く訳にはいかない。
第一彼女は未成年で僕らのリーダーなんだ。
だけど、彼女はバージンではない。
それは内科医の職業的な勘というやつだ。
彼女は確実に男を知っている。しかも複数の経験がある。
だけど、この状況でこの場所で、どうやって事を進めたら良いのだろう?
僕は辺りを見回した。テント以外に隠れる場所なんて見当たらなかった。

彼女の体がびくんと動いた。
下から僕を見つめている。満面の笑みを浮かべて。

「ケンは日本人だよね」
そう言うとテントの方へ走って行った。
後には、わずかに芽生えた性欲だけが残った。

どうやら僕の心配は杞憂に終わったらしい。
でも何故かホッとした。
相手から求められているものを、みすみす逃すことほど、残念な事はないから。

by haru_ki_0207 | 2007-05-12 08:31 | ハクモクレンの花  

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