メガネの似合う女

目と目が合っても、しばらく僕は気が付かなかった。
彼女は一瞬僕を見据え、視線を外した。
僕は彼女のちょっとオーバーな仕草で、我に返って、
彼女を無遠慮に見続けている事に気が付いた。

彼女はメガネをかけていた。
そして、メガネがとても似合っていた。
それはあたかも最初からそこに存在し、静かに君臨していた。
彼女の素顔を想像してみたけど、上手く行かなかった。
メガネ無しに彼女の存在はありえなかった。

映画「ロッキー」に出て来るエードリアンを思い出した。
彼女が絶叫する声が耳にこびりついている。

僕と同じ駅で彼女は降りた。
突然、彼女が向かいの住人だということを思い出した。

だけど、彼女の素顔は思い出せなかった。
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by haru_ki_0207 | 2004-06-18 23:09 | ショートストーリー  

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