レジ

休日の昼下がり、
レジで手の綺麗な女の子に出会った。

僕を最初に惹きつけたのは、彼女の少し大人びた声だった。
顔はどう見ても高校生のアルバイトといった感じなのだけど
声はとても「しっとり」としていて、静かな夜に電話で、話をしたくなるような声だった。

雨の降る静かな夜に彼女に囁かれたら僕はきっと恋に落ちるだろう。
その「しっとり」とした艶のある声が僕に値段を告げ、
ギャップのある声に少しどぎまぎした。

彼女に告げられてお金を渡す時、僕の目に彼女の手が映った。
僕は一目見て彼女の手が好きになった。
彼女の手の動きはとても優雅で、決められたステップを丁寧に踏んでるように見えた。
彼女の手を、自分の物に出来たらどんなに素敵だろうと思った。
彼女の全ては要らない。
手だけでいいんだ。手だけが僕の自由になって、僕を好きになってくれる。

彼女のお釣りを持った手が迫ってきた。
一瞬、手と手が触れ合い彼女の体温が伝わった。
彼女の手は暖かく、とても瑞々しかった。
僕の心臓は収縮し、一気に血液は指の先端まで走り抜けた。

彼女の声が後ろから聞こえる。
僕にお礼を言っている。
僕は振り返らずに歩き続ける。

現実に戻り、幻想を胸に抱きながら。
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by haru_ki_0207 | 2004-06-10 23:42 | ショートストーリー  

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