彼女の行方(その9)

時間が経過しました。
それが、短かったのか、長かったのかわからない。感情の高ぶりがピークを迎え
やがて、引き潮のようにすっと、まるで薬でも使ったみたいに、
言いようのない感情の塊が消えていきました。

僕は、車のドアを開け、サキの方に近づきました。
彼女は上目遣いに僕を見ました。
「本当にごめんなさい」彼女の声は、落ち着きを取り戻し、
いつものちょっとハスキーな艶のある声に変わっていました。

「もういいよ。こんな事だってある。どんな事だってある。取り戻すよ。
是正する。反省もする。ただ、後悔はしない。」

夜の風が吹きました。僕は押されるように彼女の腕を取りました。
サキの体温が衣服を通して僕に伝わってきました。
「送るよ。もう、帰れるんだろう」僕は聞きました。
サキは小さくうなずきました。
僕は彼女の細い手首を伝って、手を取りました。
僕らはしばらくお互いの手の感触を確認しあうみたいに
じっと、ただじっと夜の海に漂うみたいに流れに体を任せました。

サキの片方の手が僕の顔に伸びてきて、頬に触れました。
彼女の手は暖かく僕の冷たくなった頬を溶かしていきました。
彼女は親指の腹で僕の目元をぬぐい、その指を自分の口につけました。
「ハルさんの涙、しょっぱいね」

彼女の輝くような笑顔を今日始めてみて、僕はずっと彼女を求めていた事に気がつきました。

その日の夜、僕らは深く結ばれました。精神的に、そして肉体的に。
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by haru_ki_0207 | 2006-02-15 01:23 | ショートストーリー  

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