彼女の行方(その4)

今から血液を採取して検査をしますが、結果が出るのは一週間後です。
一週間後、また来る事は出来ますか?」
僕は素直にうなずきました。

「判断は三通り。陰性。擬陽性。陽性。
陰性であればセーフ。これから好きなだけセックスが出来るわ。もちろん、コンドームを付けてね。
擬陽性、もしくは陽性であった場合、もう一度検査を受けてもらいます。
そして必ず一週間後に来てもらうわ。もしも、また陽性であった場合、
カウンセリングセンターに行ってもらいます。もちろん、私たちも同行するわ。
覚悟は出来ていても、意外と動揺するものよ。やけになる人が多いの。
見境なく染してやろうとかね、そういうことを思ったり行動したりする人がね。
人ってね、意外と弱い生き物なのよ。自分が思ってる以上にね」

僕は少しだけホッとしました。
もしも今回、陽性でもワンチャンスある。検査に誤りもある。
結果が一週間先延ばしになる。この事実だけでも救いでした。
それと、この看護士が、意外とプロフェッショナルな事に、驚きました。
少なくとも僕よりはタフな経験を積んでいるようでした。
僕は血を採られ保健所をあとにしました。外の空気が少しだけ薄くなってる気がしました。


それからの一週間は僕がこれまで生きてきた中でも特殊な部類の七日間になりました。
もちろん、誰ともセックスをしませんでした。
こんな時に限ってびっくりするような機会が廻ってきそうだったけど、
それもありませんでした。妙に何もない日々。

ただ、僕をこの世界の淵に招きいれた女の子の事が気になりました。
HIVウイルスを保有しながら僕とセックスをし、消えていった女の子。
彼女が自分の病気を認識していたかどうかは、わかりません。
初老の看護士が言っていたように、
彼女もまた、誰かを道連れにしようと、僕を選んだのかもしれないし、
自分が感染者であることを知らずに、僕と寝たのかもしれない。
彼女が不在の今、そのことは確かめようもありませんでした。
確かなのは、彼女がHIVウイルスの感染者であるという事実だけでした。
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by haru_ki_0207 | 2005-12-01 23:52 | ショートストーリー  

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