女友達(その4)

僕らの話はとどのつまり、あの頃お互いにどう思っていたかというところに行き着きました。
そして一度入り込むと、そこから逃れる事が出来ませんでした。

「家庭内別居状態よ。ただ、一緒に住んでるだけ。私の稼ぎが悪いから、仕方ないわ。
お金は必要だもの。生活のレベルは落とせないしね。どうしようもないのよ」
「お金があったら、離婚するの?」
「もちろんよ。一緒に住む理由がないもの。どうして結婚しちゃったのかしら。するつもりなんて、なかったのにね。
やっぱり駄目よね。ぜいたくが身についちゃうと」
「ご主人の戦略だったんじゃない?」
「そうかもね。だんだんと高い壁が周りに築かれて、その外側にはお堀まで掘られちゃったって感じ」
「でも、愛されてるんじゃない?」
「それはどうかしら。愛人がいるのよ。私よりも一周り年下の。
主人が私よりも一周り以上年上だから、どうなるのかしら。すごい齢の差よね。」
「セックスはしないの?」
「しないわよ。あたりまえじゃない。同じ部屋の空気を吸うのも嫌。もう、何年もしてないわ。ずっと。
仕方ないわ。お互いに愛情がなくなったんだもの」
「いつ、結婚したの?」
「もう、長いわよ。10年近くまえかしら。あなたと別れてから、知り合ったのよ」
「僕らはつきあってないと思うけど」
「そう?あなたにはそうでも、わたしはつきあってるつもりだったけど」
「手も繋いでない」
「あなたが、誘ってくれなかったんじゃない」
「僕には、過ぎた女性だったんだよ。あの頃のあなたは。もちろん、いまでも、そうだけど」
「そんなことないわ」
「そうなんだ。僕は、あなたの前の出ると、とたんに緊張してしまって、思ったことが何も喋れなかった。
いつも聞き役で、そして、いつも時間だけが過ぎて行った」
「今も緊張してる?」
「してるかも。でも少しだけ。少しは成長した。少しは自信もついた。でも、本当にあの頃は、緊張してた。
会う前に考えてた話題を、会うといっぺんに忘れてしまった。すぐに時間が過ぎた。
いつまでたっても好きだと言えなかった。ずっと用意していた言葉が最後まで言えなかった。
10年後に言えるなんて奇跡みたいだ。今日言えてよかった。あの頃、どうしようもなく好きだった。憧れていた。過ぎた女性だった。
でも、好きだった。よかった。言えて良かった。長かった。やっと言えた。やっと伝わった」
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by haru_ki_0207 | 2005-10-08 00:54 | ショートストーリー  

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