ドトール 再び

横で二人が泣いているのが気になったので聞き耳をたててしまった。
男が女に指輪を渡していた。女は受け取って、それから号泣が始まったのだ。
高価な指輪はケースのまま、手にとってしばらく眺められていた。
中のリングは彼女の白く細い指に納まる事なく、
ケースに入ったまま紙袋の中に戻された。

「人のものを取ることはいけないことだってお母さんが言ってた。」
女は男に言って、また泣き出した。
男は終始うつむいたまま、肩を震わせていた。
女の前で泣くことが出来る男はどうしようもないクズか運命の二人だけだ。
彼が後者であって欲しいと思った。

二人が席を立った後、涙の訳を考えた。

三角関係。彼女の友達の彼が、泣いていた男。
ある時彼女は友達から彼氏を紹介され、二人は知り合った。
いつからかお互い引かれ合い、間違いが起こり彼は決断を迫られた。
そして今日この時、彼は彼女を選択したのだ。
指が白く細い、小柄で足首のしまった、感情の起伏の激しい泣き虫で気の強い女を。
よくあることだ。ただ、こういうことは人生に一度だけにして欲しい。
誰かを傷つけて自分だけ幸せになるのは。


映画「卒業」を思い出した。彼女達の行く道は険しい。
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by haru_ki_0207 | 2005-06-02 22:59 | ショートストーリー  

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