学生時代

学生さんは貧乏である。それは昔も今も変わらない。

もちろん僕も貧乏だった。加えて言うなら、社会人になっても貧乏だった。
あるアトリエ系の事務所に入り、修行という名のもと無料同然で働いた。
もっとも、それは本人も納得ずくだったので、悲壮感は無かった。
むしろ学びながらお金がもらえることに感謝したくらいである。
 
だからという訳じゃないけど、つきあった女性はみんな年上で社会人だった。
彼女たちは皆、支払いに寛大で、僕はレジに並ばないことに慣れてしまうと、
一緒に食事をする事も苦ではなくなった。
僕が彼女たちに与えられるものは限られていたけど、
最後まで彼女たちが僕に何を求めたのか、わからなかった。

  
数年後、僕は大手の事務所に移り少しだけ豊かになった。
それはやっと人並みな生活が出来る程度だったかもしれないが、大きな変化だった。
しかし僕の周りからは、一人また一人と女の子が消えて行った。
彼女たちは現実的なものの考え方を始め、結婚を選択したのである。
もちろん僕以外の誰かと。

招待状が来ることもあったけど、来ない事の方が多かった。
彼女たちは僕の知らない所で静かに見切りをつけ、一人で決断をし、
いつのまにか僕から出て行った。
投資を回収する事もせずに。
 
年を追う毎に僕の生活は豊かになった。
以前のように、彼女たちに支払いをまかせることはなくなった。
僕は食事に誘い御馳走をし、タクシーでマンションまで送った。
そして別れ際、キスの代わりに最後の言葉を聞く。

「今まで本当に楽しかった。ありがとう」

それが最後の言葉だとわかるのは随分あとだったけど、
最後の一人が出て行くと僕は本当に独りぼっちになった。
そして、僕は初めて年下の女の子と付き合った。


今、僕の目の前に若い女の子が座って、食事をしている。
彼女は経験も知識もお金もない。あるのは若さと夢だけだ。
彼女の立場に見覚えがあると思う。
ほお杖をついてさっきから僕の足に足を絡めて来る。
彼女は何年も前の僕だ。
僕は彼女の才能が好きで、彼女の夢が叶えば良いと思っている。
ただ、今も昔も、愛がないだけである。
愛がないのに一緒に居ることは罪なことなのかもしれない。

愛。奇跡のような出会いはそう簡単には転がって無いとも思う。

 
僕は遠い過去を振り返る。
夏の無い一年のような日々。

ただ、こういうのは持ち回りなのかもしれない。
そう思うと、少しだけ救われる。


なりたい自分になれる国に乾杯
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by haru_ki_0207 | 2004-12-16 00:19 | 雑記  

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