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私の職業(その16)

 その日の夜遅く、神坂さんは私の部屋に居た。神坂さんはノックもせずに私の部屋に入り込み、私の心と体の中に訳もなく入り込んだ。今にして思うと、どうしてそれほど簡単に許してしまったのかわからない。若かったからかもしれないし、もっと何か別の力が作用していたのかもしれない。私の心はまさとくんを求めながらも、同時に神坂さんを受け入れた。遊びではなく真剣に。
 その日を境に神坂さんは毎晩のように、私の部屋を訪れた。服を脱がせ、いつも違った形で私を攻めた。バリエーションの豊富さは、いまさらながら感心してしまう。神坂さんの経験と努力は並大抵のものではなかった。ただ、当時の私は神坂さんの世界で飼われている女の一人であることを、まだ知らずにいた。
 3日目の夜に、私は初めて絶頂を迎えた。あるポイントを神坂さんは執拗に攻め、私はあっけないほど短い時間で果てた。その後、神坂さんはそのポイントを自ら攻めることはしなかった。私が懇願し、奴隷のように神坂さんの指図を守り、神坂さんの出したものを全部飲み干した時に、ご褒美として与えられた。7日後に私はロープで縛られ、痛みに心地よさを感じるようになった。10日後に神坂さんは飲み屋の女を私の部屋に連れてきて、女の前でオナニーをさせた。私がバイブを入れている間、神坂さんと女は私の椅子に座って、愛し合った。
 14日目の夜、神坂さんは私の通帳を持って出て行って、その夜は帰って来なかった。次の日も、その次の日も神坂さんは帰っては来なかった。昼間、診療所で顔を合わせたが、態度はつれなかった。あからさまに避けているのとは違う微妙な距離。私が話しかけると優しく応え、笑いかけると陽炎のように離れて行く。それは神坂さんが私から離れる最後の日までとった、一貫して保たれた距離。

 神坂さんが外泊を続けて3日後、私は町の飲み屋街にいた。

by haru_ki_0207 | 2004-09-20 01:37 | ショートストーリー  

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