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コーヒー讃歌

秋の夜長。
温かいコーヒーを淹れて飲む事に幸せを感じるようになって
どの位の年月がたつのだろう?


高校受験の時はまだ、ネスカフェに砂糖とミルクを入れていたけれど、
大学受験の時にはコーヒーの粉をドリップで蒸していた気がする。
まとわり付くような香りを肺の奥まで吸い込んで、胸の何処かに溜めて、
黒い液体と一緒に、二階の自分の部屋まで持って上がった気がする。


あの時の階段を登る自分の足音が、何故か今、手に取って触れるくらいに
思い出すことが出来る。きっと何処にでもある、足音なのだろうけれど
その音階は柔らかく、今も一人で居る部屋に心地良い。

いつか僕は、大好きになった女の子に、僕が淹れたコーヒーを飲んで欲しかった。
やがて一緒に暮らし始めて、毎朝僕のコーヒーを飲んで欲しかった。
そういうささやかな夢というのは、なかなか叶わない。



僕は今、そんな足音に耳を澄ませながら、一人、部屋でコーヒーを飲んでいる。
秋、と言うにはまだ少し早い気がするけれど、秋を感じさせるものは確実にある。

夏は終わろうといしている。そして僕が大切にしていたものも
終わろうとしている。

それでもやっぱり、コーヒーの美味しさだけは、いつまでも変わらない。

# by haru_ki_0207 | 2009-09-13 02:17 | 雑記  

ユニクロ

朝、
出勤途中の電車の中で、
微妙な違和感に包まれた二人を見た。

生地がグレーの、黒いドット柄のシャツを
二人は着ていた。

うりふたつというか、全く同じ。

「いやあ、かぶっちゃいましたね」と、
声をかけてあげたかった。


一人は気がついていて、目が泳いでいた。

一人は背を向けていたから
気が付いてなかったかもしれない。

そして、僕が気づいてしまった。

きっとユニクロのシャツだと思った。




夜、
帰宅途中の電車の中。

目の前のおばあさんが
釣り棚から重い荷物を降ろそうとしていた。

僕は手を貸してあげた。
おばあさんは僕に軽く会釈をしてお礼を言った。

僕の斜め45度に座っていた女の子が
僕を見て微笑んだ。

しばらくたってその女の子を何げに見ると、
まだ微笑んでいる。

たまには良いことをするのも良いなと思った。



僕は出入り口のドアにもたれ掛かって外を見ている。
横には向こう側を向いて、おっさんが立っている。
黒いバックを肩から下げている。
どこかで見たことがあるデザイン。
どこのメーカーかも言える。
いくらかも言える。
ユニクロで2980円だ。
僕も買った。

そして今、それを手に持っている。



女の子が微笑んでいる理由がわかった。
全ての現象には理由があるんだ。

微笑んでいるんじゃ無くて、笑っていたのだ。
僕は彼女の方を振り返る勇気はなかった。

「畜生」と、思った。

金に糸目はつけない。
誰にも真似出来ないバックを買ってやろうと思った。
デザインが優れ機能的で実用的なバックを。

僕は最後まで振り返る事なく、
目撃者である女の子を気にしながら、
電車を降りた。


新しい小さな決心を抱きながら。






追伸
僕は未だに、ユニクロを越えるバックを
発見していない。
どれも、一長一短あって、
僕の要求を満足してくれない。
値段が高ければ良いというものでもないのである。

ただ、かぶるのはちょっとね。

# by haru_ki_0207 | 2008-09-28 23:49 | 雑記  

文章

何かが僕の中に入っていて

小さなほころびを見つけて

それをつまみ上げて

でも思ったよりも根が深くて

引っ張ったりかき出したりしていたら

得たいのしれないものが現われてきて



それは誰の為の、何の為のものか、解らないんだけど

段々とおぼろげに形が見えてきて

それを全部引っ張り出して、

あらわにする。



思っていたよりも、大きかったり

形がいびつだったり、妙に尖っていたり、

薄っぺらだったり、あるいは綺麗だったりする。



僕にとって

自分のための文章を書くという作業は

そういう事だった。



たぶん。

# by haru_ki_0207 | 2008-06-15 15:53 | 雑記  

帰省

春休みに入って、

帰省している人達を見かける。

それは一目みたらすぐに分かる。



少し大きめの荷物。

ちょっとあか抜けた服。

友達と連れだって、大きな声で喋り、

時折、懐かしそうに目を細める。



僕もそうだった。



初めての帰省。

田舎から都会に出て、再び田舎に帰ると

少し偉くなった気がした。

田舎の奴らがくだらなく見えた。

同じ色をした町の中で、はいつくばって生きて、

そんな奴らを、可哀想だと本気で同情した。



僕はずっと、くだらない人間だった。

今もたいして変わりはしないのだけれど。



ただ、愛を知って少しは変わった。

僕は・・・・・・・・



少しはまともになったかい?

# by haru_ki_0207 | 2008-04-01 00:22 | 雑記  

ハクモクレンの花 追伸

この話に出てくる健太郎君は、僕のかつての友達の名前を拝借しました。
フランチェスカは「マディソン郡の橋」の主人公の名前を拝借しました。
五郎は、特に意味はありません。というか他の名前も特に意味はないのだけれど。

こども病院というのは福岡にある実在の病院ですが、まだ立派に運営しています。
その中庭はとても無機質で草一つ生えていないのだけれど、
その前を通るたびに、僕は木が植えてあることをイメージしていました。

「ハクモクレンの花」という題は、僕の唯一の友達の好きな木を拝借しました。
満開のハクモクレンは3月に咲きます。

ハクモクレンの花 追伸_a0025524_0521132.jpg

# by haru_ki_0207 | 2007-05-22 00:52 | ハクモクレンの花