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SNS(その6)旅行

◆6 旅行
良く晴れた土曜日の朝、私達四人は柏田さんの車に乗って、温泉地へ向かった。最初、緊張していたアユミと柏田さんも、すぐに打ち解けた。
旅館へ着くと、私達はそれぞれの部屋に荷物を置いた。アユミと私が同じ部屋で、鮎川さんと柏田さんが同じ部屋だ。
二人で露天風呂に入るとアユミはとてもリラックスしているように見えた。
「ねえ、どう?柏田さん」私がそう聞くと
「感じの良い人ね。おしゃれだし。それにいかにもお金持ちって感じだね」
と言って赤くて長い舌を出した。
「そうね。車はメルセデス、時計はロレックス。嫌味はないけど、持ってるって感じだよね」と私は言った。おしゃれというのは私のお陰だけど。
時刻はまだ午後三時で太陽の光がアユミの白い肌に淡く射した。アユミの肌に影が出来て、なお一層、スタイルの良さを際立たせた。
「来てよかった」とアユミは言った。
「その後、マサト君はどう?」と聞いてみたけど
「別に、もうどうでもいいわ」とアユミは言った。
タフで立ち直りが早いのだ。

食事は、鮎川さん達の部屋で一緒にとった。別々の部屋と言っても、私たちの部屋とは襖一枚で繋がっていて、襖を開けると広い一つの部屋になった。
私は鮎川さんの隣に座った。必然的に柏田さんの隣がアユミになった。テーブルは奥行きがあって、料理が隙間もないほど並べられ、私達とアユミ達との間には、国境みたいな隔たりがあった。アユミの肌は、日本酒を飲むと淡く赤くなった。その事を私が冷やかすと、アユミはとても照れた。
「鮎川さんは、酔うとどうなるんですか?」とアユミが話題を鮎川さんに向けた。
「どうにもならないよ。ちょっと陽気になるだけかな。それにそれほど強くはないし」
「柏田さんは、お酒強そうですね」と今度は私が柏田さんに振った。
「そうだね。職業柄、強くもなるね。接待したりされたり」
「そういうの、カッコいい」とアユミが言った。
「かっこいい?」ちょっと照れて柏田さんが答えた。
「ええ。仕事の出来る男って感じで」
私は、一瞬、鮎川さんを見た。ちょっと寂しそうな顔をしていた。
「ミチルはどうなるの?」とアユミが言った。
「私?私はお酒、あまり飲まないわ。それにたくさん飲む人、それほど好きじゃないし」
「お酒に、嫌な思い出あり?」と柏田さんが聞いた。
「嫌な思い出というよりは、嫌な体験かな」
「え?どんな体験?聞きたい!聞きたい!」アユミの無邪気な声。目がとろんとして、もうすでに酔っている。
「楽しい話じゃないわ。私の父がお酒を飲むと、人が変わってしまうという話し。何処にでもある話しよ。私の母は再婚したの。私の本当の父が亡くなってしばらくたってから。私が高校生の時だったわ。その時母は四十歳でその男は一回りも年下。いつも酔うと気が大きくなって、乱暴するの。そんな話。最近まで一緒に暮らしていたわ。私の給料のほとんどをむしり取ってしまうの。最低の男だったわ。私のね、初体験の相手ってその男なの。母が居ないときに。抵抗出来なかったわ。母にも言えなかった。ごめんなさい。こんな話」
鮎川さんは、「もういいよ」と言って私の肩を抱いてくれた。いい匂いがした。何とも言えず安心出来るにおい。私は鮎川さんの胸に顔をうずめて泣いた。そんな事初めてだったけど、一度泣いてしまうと、止めどなく涙が流れてきた。鮎川さんは私の背中に手をまわして、ずっとさすってくれた。あたたかかった。ゆっくりと、こみ上げてきた。胸の奥に眠っていた塊。それが溶け出して、上がってきた感じ。欲しくなった。どうしようもなく、本当に欲しくなった。鮎川さんの唇。いつも触れているのに。
私はアユミの見ている前で、鮎川さんの首筋にキスをした。首筋は熱く私の唇もさらに熱くなった。私は鮎川さんの首や耳や顎や頬を熱くなった唇で吸った。音が部屋に響いた。そして鮎川さんの唇にキスをした。アユミが見ていると思ったら、また一つ、何かがはずれた。そしてさらに私は鮎川さんの唇を求めた。鮎川さんに舌を絡めると、ちょっぴり日本酒の味がした。その甘美な液体を私は舌で求め吸い続けた。切ない音が広くて静かな部屋に響いた。私は鮎川さんに向き直り、鮎川さんの頬を両手で覆い、唇を貪った。私は鮎川さんに馬乗りになった。そして、ねっとりとしたものを求めた。私の荒い呼吸がこだまして私の耳元に届いた。その音を聞くと、尚更に興奮した。見られてる。そう思うと下半身が熱くなった。私の股間に鮎川さんの太ももが当たった。私はその太ももに、熱くなったものを押し付けた。こすり付けた。欲望の赴くまま、私達は絡み合った。視線が痛かった。アユミが見てる。私達は、崩れ落ちるように横になった。そして何度も何度も絡み合って、敷かれた布団にたどり着くと、その中にもぐりこんだ。

「カチリ」という乾いた音がした。さっきまで明るかった部屋が薄暗くなった。私は布団の中から、アユミ達を見た。柏田さんの顔とアユミの顔が重なり合っていた。柏田さんの腕が、アユミの首に絡まっていた。アユミは身動きが取れず、かといって抵抗もせず、身を任せていた。鮎川さんの手が、私の浴衣を脱がせた。そして大きな手が私の胸をわしづかみにした。痛いほどの快感が身体に流れて、私は大きな声を出してしまった。柏田さんの手が、アユミの胸をまさぐっていた。でも、上手く届かない。アユミは自ら体を入れ替え、柏田さんの手を自分の胸に導いた。アユミの短い喘ぎ声が聞こえた。その声に私の興奮も増した。私達は音楽を奏でるみたいに、高めあった。それは柏田さんとアユミが隣の部屋に行って、襖が閉められても、続けられた。

by haru_ki_0207 | 2011-03-03 14:55 | SNS  

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